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清本リペアのよもやま話~家具・建材の調色と描画技術~

皆さんこんにちは

株式会社清本リペアの更新担当の中西です。

 

~家具・建材の調色と描画技術

 

家具や木製建材を修復する際、傷や欠けを埋めるだけでは、美しい仕上がりにならないことがあります。

補修した場所の色が周囲と違っていれば、傷そのものはなくなっても、修復部分が目立ってしまうからです。

家具・建材の修復塗装では、周囲の色に合わせて塗料をつくる「調色」と、消えてしまった木目や模様を描き直す「描画」の技術が重要です

木材の色は、単純な茶色ではありません。

赤みのある茶色、黄色みのある明るい色、黒に近い濃い色など、樹種や仕上げによって大きく異なります。同じ一枚の板の中でも、場所によって明るさや木目が変化します。

さらに、家具や建材は時間の経過とともに色が変わります。日光による色あせ、油分の変化、塗膜の黄変などによって、新品のときとは違う色になります。

そのため修復では、カタログにある標準色を塗るだけではなく、目の前の対象物に合わせた色をつくる必要があります。

色を分解して考える調色技術

職人が家具の色を見るときは、単に「茶色」とは考えません。

赤、黄、黒、白など、どの色がどの程度含まれているかを分析します

たとえば、温かみのある茶色には赤や黄色が多く含まれています。落ち着いた濃い茶色には、黒や青みが加わっている場合があります。

補修部分が明る過ぎる場合は、黒や補色を少量加えて調整します。赤過ぎる場合は、反対の性質を持つ色を少し加えて彩度を抑えます。

ただし、一度に大量の色を加えると元に戻しにくくなります。

調色は、少量ずつ色を加え、混ぜて確認する作業の繰り返しです。

塗料が乾く前と乾いた後では、色の見え方が変わることもあります。そのため、試し塗りを行い、乾燥後の色を確認してから本番の施工へ進みます。

照明によっても色は違って見えます。

工房の白い照明では合っているように見えても、実際に家具が置かれる暖色系の照明では違和感が出ることがあります。

可能であれば、対象物が使用される場所の照明や自然光でも確認します☀️

周囲の色に合わせるぼかし塗装

修復した部分へ同じ色を塗っても、境界線がはっきりしていると補修跡が分かってしまいます。

そこで使われるのが、塗料を周囲へ少しずつ薄く広げるぼかし塗装です。

傷の中心部分には必要な色をしっかり付け、外側へ向かうほど薄く塗装します。

新しく塗った部分と既存塗膜の境目を目立たなくすることで、自然な仕上がりになります。

ぼかし塗装では、スプレーガン、エアブラシ、筆、布などを使い分けます。

広い面積にはスプレーガン、細かな傷にはエアブラシや筆が適しています。

塗料の濃さ、吹き付ける距離、角度、空気圧によって、色の付き方が変わります。近過ぎると塗料が集中して垂れやすくなり、遠過ぎると表面がざらつくことがあります。

職人は、対象物の大きさや塗料の性質を見ながら、細かく調整します。

一度で色を完成させようとせず、薄い塗膜を何度も重ねることが基本です。

少し塗って乾かし、色を確認してから次を重ねることで、濃くなり過ぎる失敗を防ぎます。

消えた木目を描き直す技術

木製家具や建材の表面には、天然木ならではの木目があります。

深い傷をパテで埋めると、その部分だけ木目が消えて平らな色になります。色だけを合わせても、周囲に木目がある中で一か所だけ模様がなければ、補修部分が目立ちます。

そこで、細い筆や専用ペンを使って木目を描き直します️

木目は、同じ太さや間隔で並んでいるわけではありません。

太い線、細い線、途切れた線、濃淡のある線などが不規則に組み合わさっています。

自然な木目を描くためには、補修部分だけを見るのではなく、周囲の木目がどの方向へ流れているかを確認します。

左右の木目をつなげるように線を描き、濃い線の間へ薄い線を加えます。

あまりに整い過ぎた線を描くと、印刷された模様のように不自然になります。わずかな揺らぎや濃淡を加えることが、本物の木目へ近づけるポイントです。

使用する色も一色ではありません。

濃い茶色、薄い茶色、黒、赤みのある色などを重ね、奥行きを表現します。

描いた直後は強く見える木目でも、上から透明な塗膜を重ねると少し落ち着いて見えます。最終的な仕上がりを想像しながら濃さを調整する必要があります。

艶を合わせる技術

修復塗装では、色が合っていても艶が違うと補修跡が目立ちます。

家具や建材の表面には、艶消し、三分艶、半艶、全艶など、さまざまな艶があります✨

艶のある表面は光をはっきり反射し、艶消しの表面は光を柔らかく拡散します。

補修部分だけ強く光っていたり、反対にくすんで見えたりすると、見る角度によって境目が分かります。

既存塗膜の艶は、製造時の状態から変化していることがあります。

長年手が触れた場所だけ艶が出ていたり、日光や清掃によって艶が失われていたりします。

そのため、塗料の製品表示だけを参考にするのではなく、実際の表面と比較しながら調整します。

艶消し剤を混ぜる、異なる艶の塗料を組み合わせる、乾燥後に研磨や磨きを行うなど、さまざまな方法があります。

最終的には、斜めから光を当て、補修部分と周囲の反射が自然につながっているかを確認します。

色あせや日焼けを再現する

窓際に置かれた家具や屋外に面した建材は、紫外線によって色が変化します。

部分修復で新品に近い色を塗ると、周囲より鮮やかになり、逆に目立ってしまうことがあります☀️

修復の目的は、必ずしも新品の色へ戻すことではありません。

周囲の経年変化に合わせ、自然になじませることが大切です。

黄色や茶色を薄く重ねて古色を表現したり、彩度を抑えて色あせた雰囲気を再現したりします。

アンティーク家具では、傷や色むらそのものが魅力になっていることもあります。

すべての傷を完全に消して均一にすると、その家具が持つ歴史や風合いまで失われる可能性があります。

どこまできれいにし、どこを残すかを依頼者と相談することも重要です。

新品のような仕上がりを目指すのか、古さを生かしながら使いやすく整えるのかによって、調色や塗装方法は変わります。

金属や石目模様にも応用される描画技術

家具・建材の修復対象は、木目だけではありません。

アルミサッシ、金属扉、人工大理石、石目調パネル、タイル、化粧シートなどにも、調色や描画の技術が使われます。

金属の補修では、表面の色だけでなく、細かな光沢や粒子感を再現します。

石目調の建材では、複数の色を重ね、斑点や筋模様を描きます。

大理石のような模様には、細い線を一度に描くのではなく、濃淡やにじみを加えながら自然な流れをつくります。

化粧シートの補修では、印刷された模様へ合わせて線や点を再現します。

近くで見ても違和感が出ないよう、細かな作業が求められます。

このような技術は、交換が難しい建材の部分補修で特に役立ちます。

大型の扉や壁材を一枚交換すると、材料費や施工費が大きくなることがあります。傷んだ場所だけを自然に修復できれば、費用や廃棄物を抑えられます

写真では分かりにくい現物の色

近年では、写真を送って修復の相談をすることも増えています。

写真は傷の位置や大きさを確認するために便利ですが、正確な色を判断するには限界があります

撮影時の照明、スマートフォンの設定、画面の明るさによって、実物とは違う色に見えることがあるからです。

そのため、本格的な調色では現物を確認したり、家具から外せる部材を見本として使用したりします。

現場で施工する場合は、その場で少量ずつ調色し、対象物へ合わせていきます。

職人の目だけに頼るのではなく、必要に応じて色を数値で測定する機器を使うこともあります。

しかし、数値が同じでも、艶や素材、光の反射によって見え方が異なる場合があります。

機械による測定と職人の目を組み合わせることで、より自然な色合わせが可能になります。

まとめ

家具・建材の修復塗装では、傷を埋めるだけでなく、周囲と自然になじませることが重要です。

そのためには、色を分析してつくる調色技術、塗装の境界を目立たなくするぼかし技術、木目や石目を描き直す描画技術が必要です。

さらに、色だけでなく、艶、光の反射、経年変化まで合わせなければなりません。

修復部分がどこだったのか分からない状態へ仕上げるには、観察力、色彩感覚、塗装技術、手先の細かさが求められます。

一つとして同じ色や模様がない対象物へ向き合い、その場で最適な色をつくり出す。

家具・建材の調色と描画は、塗装という仕事の中でも、職人の経験と感性が強く表れる技術なのです